道場の理念
世界に拓く「野間道場」
講談社社長 野間省伸
野間道場は、大正14年にこの音羽の講談社の敷地に建てられました。
一時閉鎖された時期はありますが、年中無休で朝夕の稽古に日本中から訪れた剣士が、
この道場で汗を流し、人生を語らってまいりました。
初代講談社社長であり、私の曽祖父である野間清治の人生哲学の根幹は剣道にありました。
長くなりますが、「野間清治伝」より引用させていただきます。
「武の目的は平和にある。人と和し、天と和す。大なる此の調和が武の徳である。(中略)一部は一部として完成し、全部全身が我が心のままに渾然として最善を尽すと同時に、ことごとくが、一致協力して、初めて立派な太刀となる。(中略)これ渾然一体(講談社の社是となっている)の和の力、則ち瞬息、心気力の一致によるものである。『一部と全部』の理法常にこれなるかなと感嘆するのである」そして「剣道の教えは、剣のみに止まらず、万法一法、実は世上百般の教えに通じている」即ち「剣道のすべてが、真に人間完成の至上道であることに気づくであろう」と説いています。
野間清治は剣道を修業の道とし、剣道によってもたらされる大調和の世界を追い求め、武の徳を広く説こうとしました。
武の徳とは、戈(ほこ)を止めることであり、「左伝」(春秋左氏伝)の中で七徳ありとされています。即ち「夫(そ)れ武は暴を禁じ、兵を戢(や)め、大を保ち、功を定め、民を安んじ、衆に和し、財を豊かにするものなり」と説かれています。野間清治の人生はこの顕現にほかならないといってもいいでしょう。
野間清治は、この大調和の世界を、この野間道場で実現し、世界に発進しようとしたのではないでしょうか。
昭和19年に一時、野間道場は閉鎖されましたが、私の祖父、野間省一はこうした精神を汲み、昭和37年の秋に再開に踏切ったのでした。
持田盛二先生(十段)、佐藤卯吉先生(九段)、増田真助先生(九段)を中心に野間道場は戦前以上の活況を呈しました。最近においても、講談社剣道部をはじめ、道好会の皆さんの努力により、会員も400名を越えると聞いております。
剣道も世界的になり、平成27年、東京において、第16回世界剣道選手権大会が行われましたが、大会前後に、欧米、南米、アジア諸国の剣士が野間道場を訪れました。
日本のみならず、世界の剣士にとって野間道場で稽古することは、大変な名誉であると聞いています。嬉しいことです。
祖父、野間省一は「世界に拓く講談社」をモットーに、出版を通して、日本の文化を世界に紹介し、世界の文化を日本に取入れ、野間アフリカ出版賞をはじめ、多くの事業を世界で展開してまいりました。野間清治の説くところの「世界の大調和」に他なりません。
野間道場も世界に拓かれた、といってもいいでしょう。
野間道場を訪れる、日本の剣士の皆さん、そして世界中の剣士の皆さん、どうぞ、野間清治、野間省一のこの精神を忘れずに修業をつまれて下さい。これこそが野間道場を大切にするという、ほんとうの心と思います。
(平成28年1月)
道場訓十箇条
野間恒 撰- 道場に出入の際は、おもむろに低頭敬礼すべし。
- 出入には見苦しからぬ服装をなし、和服の場合は袴を着すべし。
- 敬虔の念を保ち、姿勢の端正を持すべし。
- 静粛謹直にして、かりそめにも高談戯笑、拍手声援等すべからず。
- なるべく飲食後、相当の時間を置きて後稽古すべし。
- 酒気ありては、稽古は勿論、道場に入るべからず。
- 刀は己が魂なり、防具は甲冑なり、法式の如くことに鄭重に扱うべし。
- 道場内は、旦暮洒掃して清浄を保つべし。
- 他流を批判し、相互に技術を誹謗せざること。
- 剣を学ぶ者は、短気我儘を戒め、争心あるべからず。心常に和平なるを要す。
野間恒 略歴
1909年(明治42年)4月24日~1938年(昭和13年)11月7日
剣道教士。大日本雄弁會講談社第2代社長。現在の東京都千代田区出身。
15歳で中山博道の有信館に入門。その後、講談社創設者である父野間清治が設立した野間道場で、持田盛二・増田真助の両師範から指導を受ける。
1934年(昭和9年)、皇太子殿下御誕生奉祝天覧試合の府県選士之部で優勝。
1938年(昭和13年)10月16日に父・清治が急死(享年60歳)。同日、社長に就任するが、恒自身もすでに闘病中であり、同年11月7日に逝去(享年30歳)。
運営組織
株式会社講談社 剣道部
- 講談社剣道部部長
-
赤岩 一郎
講談社野間道場道好会
- 道好会役員会
-
代表
爲石 日出生
-
副代表黒田 昌宏
-
役員
小林 一郎
井田 守
赤岩 一郎
-
運営委員
行方 喜久雄
常廣 大助
髙野 勉
髙橋 和法
中川 脩平
小山 倫子
種田 恵子
野田 真紀
小林 宏美
- 道好会会員(2024年3月現在)
-
登録会員数
300名
範士
13名
八段
30名
六・七段
200名
稽古運営
講談社野間道場の朝稽古は、株式会社講談社のご理解とご支援の下、野間道場道好会の会員による会員制の稽古会として運営されています。
- 稽古日
- 毎週火曜日を除く毎日
- 稽古時間
- 午前7:00~8:00
- 退場時間
- 午前9:00 厳守
- 会員制
- 入会は道好会正会員の推薦に基づき、役員会の承認を要する
- 会費
-
- 正会員
- 12,000円/年
- 賛助会員
- 10,000円/年
- 入会金
- 3,000円(新規入会時のみ)
- 外来稽古参加
-
- 道好会会員の紹介と役員の承認によって、非会員(外来者)の稽古参加を受け入れる
- 原則として事前の申込みの上、外来者稽古参加申請書の提出を求める
- 見取り稽古の場合も同様
- 道好会会員の子弟、または道好会会員の指導を受けている者で、その保護者・指導者が同行する場合に限り、中学生以下の稽古参加を認める
- ただし中学生以下の参加者のための特別な稽古指導は行わない
所在地
東京都文京区目白台3-29-18
株式会社講談社 講談社第一別館5F
アクセス
東京メトロ有楽町線 護国寺駅下車 6 番出口
- 音羽通りの大塚警察署前交差点を右折
- 首都高速の高架を通過したすぐ右手の「三菱UFJ 証券」の看板手前で右折
- 2 車線のスロープ右手の建物が講談社第一別館
自家用車で来場の際は、
近隣のコインパーキングを利用のこと。
講談社敷地内の無断駐車は厳禁